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抗 い の 傷 痕

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女の目的は全生物に死を与えること

気が狂っているのか、それが神の意志なのか
それは誰にもわからない
だがその回答を見るために要する時間はそうはかからないだろう
その時は最期に俺も殺されるようだが・・・

俺は人を蔑んだ笑顔が嫌いだった
だからそういった間違った笑顔を使用する人間を根絶してきた
その最中、俺は女と出合った
全ての生物を根絶する、その中には俺が根絶してきた者たちも当然入っていた
考えてみればおかしな理由だが
そんなおかしな理由で今俺はこの女と行動を共にしている

女は人間かどうか問わず
生物という生物を片端らから根絶やしにしていった
俺はただそれを見守るだけだった
止める事は出来ない
何故だかこの女には敵意を抱けないのだ
思考が読めないからか、容姿が美しいからか、表情が常に憂鬱で暗いからだろうか
殺される側も抵抗を一切せずに、まるで何かを悟ったかのように葬られていった
今までは潔く死ぬモノが今までは大半だった
しかし、じきに殺される事を拒絶する生物が出てきた
その生物・・それは人間
人間は抵抗する
自分達が生き残るために女を殺しにかかった
まずは女の精神を攻撃し心を破壊して死へ誘導するのだ
手始めにマスコミ等を通じ一般市民の
女への感情を悪意と敵意と殺意で満ちたてるように様々なメディアで洗脳を開始する
こうしてその残虐な精神殺戮兵器はいとも簡単に完成した
兵器達は電脳通信等で攻撃を開始した
ありとあらゆる
蔑みの言葉 屈辱の言葉
侮辱の言葉 そして罵りの言葉 を語り並べて
その中で女はいつしか異端者と呼ばれる様になっていた
これらをもし並みの人間がうけたのならば
既に廃人と化して自らの命に終止符を討ってしまうに違いないだろう
だが女の心は全く怯む事は無かった
もとより女の心は病み切っていたのかも知れない
心への精神的な攻撃は効かない
そう悟った人間達はついに直攻撃を仕掛ける
それはもう情け容赦の無いものであった
ある者は刃物を手に取り
ある者は拳銃の引き金に指をかけ
ある者は毒散布の飛行機を駆り
ある者は戦車や戦闘機に乗り込み
ある者はミサイルのスイッチを押した
正々堂々、不意討ち、闇討ち、暗殺、罠
ありとあらゆる攻撃方法を示した
普段見る事の無い残虐な行為の進行を
まるで戦争映画を見るような感覚で見ていた一般市民は密かに歓喜した
そして何より勝利を確信していた
だがその大多数の意は悉く翻され
それらは全て返り討ちにあっていく
更には後ろを顧みない攻撃の二次災害でついには地球が壊れてしまった
その地球が壊れた原因は全て異端者のせいだと
様々な理由で死んでいった人達は全て異端者のせいで死んだのだと
全ての責任を異端者に擦り付けた
誰が言い出したのかはわからないがいつの間にかそれが常識ということになっていた

時は流れ

異端者を殺せ
異端者は悪だ
正義は我等にある
そんな大儀も今では聞こえなくなった
勝ち目が無いとわかった人間達は散り散りに逃げ去ったのである
始めは他人事だと思っていた一般市民も
一向に異端者死亡の一報が無い事や
流れるメディアは異端者に葬られたその膨大な同胞の数を
毎日毎日読み上げるだけと化した
その数は増える一方で勢いは一向に収まらない
日に日に一般市民達の顔色も変わっていき
ついには自殺者を出すような恐怖感に自らを追いやっていた
そして・・ついに地上から生物は根絶された
ただ二人を残して
しかし異端者はまだ俺を殺そうとしない
まだ何処かに何かがいるというのか

地上には地球破壊に伴い何処からとも無く現れた、無人殺戮人形が徘徊している
地上、この表現はもはや正しくない
地球は壊れた、その重力を解き放ちながら
そのお陰で今は空を漂う根無し島が無数に残るだけだ
このままでは大気圏外に飛び出さないのかとも思ったが
どうやら宇宙もいつの間にか消滅し縮小していたらしい
人間達は異端者の出現の他、この宇宙消滅という事実も合い重なった事により
直にこの地上から逃げ去ったのかもしれない
それは目に見えるこの世の寿命そのもののようであり
この世界に存在する全てに対する目に見える終わりのようだった。
では、そのすぐそこまで迫った全ての終わりを眼のあたりにした人間達は
一体何処へ逃げ去ったのだろうか

光学迷彩で隠されたその黒い施設は太陽が死滅してようやくその姿を現した
この施設は一体何であるか、そして空に浮かぶそれに辿り付く方法はあるのだろうか
だが異端者は全く迷う事も無く空に身を投げ下へ向かって落ちていく
何故上にあるものへ辿りつくために下へ向かうのか・・
しかしそれはちゃんとそこにあった
上にあったはずの黒い施設が今真下に確かにその姿を確認出来る
この現象はこの世界が確実に収縮している事を示しているのだろうか
この世の領域の限界に飛び出し振り出しに戻され辿り付いた そういう事なのだろうか
更に落下していく・・眼に映るそれは徐々にその姿を視界いっぱいに広げていく
この中に人間達がいるのか
人間達は今、一体何処へ隠れているのだろうか
着地・・というより落下の勢いを利用してそのまま装甲を突き破り強引に内部へと乗り込んだ
ついた内部は通路と思わしき場所で狭く暗く長い通路が続いていた
その先に進むと次は蜃気楼のような景色が広がっていた
じりじりと周囲の風景がそれに溶けているかのように揺れ動いている
それはまさしくメディアというものそのものの世界だった

もうひとつの世界
電子で出来た世界
0と1に変換された人間の巣食う世界
そこは地が無く
ふわふわと全ての景色が浮遊していた
その中をゆらりゆらりと揺れていた

声が聞こえる

「表の清掃が終わりましたか御苦労様です」
表の清掃・・それは今まで異端者と呼ばれるまでになったこの女がしてきた行為
つまり全生物に死を与えた事を指してるようだ
そして今までいた世界が表というならこの場所はもうひとつの単位を有している世界という事か
今までの世界が表ならここは裏と呼ばれている事が推測できる
そして何故か労いの言葉
そうか、この女は・・
ある種の答えが一瞬、脳裏を過ぎったがその刹那、女の意外な行動に俺は目を疑った
「あなたにはこの世界にログインできるIDとpassが・・・」
そこで音声は破壊された
しかしどのように破壊されたのかが全く目視出来なかった
辛うじて確認出来るのは動かなくなった声の主が口と目を開けたまま
そう、ビデオの一時停止をした時の画面のような不自然な格好を維持している
その事態から一瞬の出来事がしばらく連続して起こった
「殺された!?」
何処からとも無く瞬時にして無数に様々な形をした声を話す物体が現れた
「そんな!?どうやって!この世界は死なんて存在しない筈なのだぞ!」
「しかしこのID・・表に送られた清徒じゃ!?」
「清徒!!」
セイトという声にこの場に居た全ての声の主が畏怖した
そして、そこで再び一時再生ボタンが押されたように
大量にそこにいたそれらは中心にいる二人を残して全てが停止した
この事態から間を置かず次は辺りの景色が歪んでいく
「何を考えている、せっかく確保した容量は何のためだと思っているのだ」
確保した容量?
「ここまで消してどうす−」
忠告虚しく停止させられていく声の主達

もう声は聞こえない

これで・・表にも裏にも人間はもう一人もいない筈だ
しかし、まだ俺を殺す気配は無いようだ、ということは・・?
それに結局この裏の世界にいた声の主達は本当に人間だったのだろうか
いくつもの謎を残しながらログアウトを行なった

「おかえり」
表へ出た途端、唐突に声がした
それは異端者に向けて放たれた言葉のようだった
「どうしたの?・・口震能力に損傷が?」
そういうとその声を発した者がおもむろに歩み寄ってくる
「渇き過ぎてるわね」
そういったかと思うとその生物は不意に異端者に口づけをしたように見えた
「っ・・かは」
異端者が口を始めて開きゆっくりと言う
「言葉の喋り方なんて、ずっと使ってなかったから、忘れてしまっていたわ」
「・・そうね」
そうほんの少しの会話を交わした後
二人は無言で何処かへ歩き出した
歩き出して少し間を置いたタイミングで
足元の島が割れて崩れ始めた
落ちていく
底なしの空へと放り出されてしまった
「空で空きが埋まっていくわ」
この底なしの空の中を無数のものが落下し続ける
「ラスト。」
生物がつぶやいた
落下スピードがどんどん速くなってきている
そんな中で何処からか落下してきたであろう無人殺戮人形達が襲ってきた
眼前の人形達を見て生物が言った
「あなたね、まるで」
「・・・確保するわよ」
生物の方を見て返事を渋った後、目的のみをつげた

壊れた人形と共に落下する方向へ進んでいく
「レイナ、今、領域が保たれたわ・・飛ぶわよ」
そう生物が告げた後
唐突に落下が完全停止した
周囲のものも同時に停止している
そして空が割れた

知識が溢れ出てくる

人間は太古の昔にもうひとつの世界を発見した
人間はそこへ優れた人間だけをよりすぐって移住した
その世界は裏と呼ばれそこでは死を筆頭にあらゆる概念が無効化されていた
裏の人々は表からのその世界への扉を閉ざした
表へ残された人間はその事を一切知らない

やがて裏の人間は領域容量というものの存在を知った
領域容量とは全ての物質の限界値
領域容量は表・裏共通の数値だった
裏は死の無い世界、人が死なずに増え続けることは
容量が増えることと同じであった
そこで表の容量を奪い取り裏の容量へ使いまわす事を考えた
容量の確保、つまりそれは表の人間を殺すという事を意味していた
そして表の世界へあるものが送り込まれる
表の人間を殺すもの=表を清掃する使途
それが清徒である
しかし清徒は忽然と姿を消す
そしてその同時期の表へ現れたのが
異端者と呼ばれたレイナというひとりの女だ
彼女の目的は表と裏世界の領域容量の確保
生物は増えすぎたのだ
生物に何故死があるのか

それは神が人間に"時"という攻撃を仕掛けているからだ

そしてそれに敗れたものからこの領域容量を零れ落ちていく事になる
領域容量はいわば神と人間との戦いの場なのである
いや人間だけではないこの領域容量に存在する全ての生物は神と敵対しているのだ
そしてその戦いの中で人間は同族争いをしている内に根絶されてしまった

神は領域の割れ目にいる
つまり重力が発生している中心の中にいるのだ
今までは重力に吸い寄せられた岩や地上が邪魔をして中心に近づくことが出来なかった
しかし元は宇宙であり地上であったそこは、今や何も無い空に成り果てた
そして今ついにこの空の割れ目を越えてその重力の中心の向こう側へと進む時がきた

神は初めての時の支配者の訪問に驚いた

「生きる意味を示しに来たのか」

生きる事の終着(ゴール)は神を殺す事だ
しかしその終着(ゴール)は決してすることの出来ない、してはならないものだった
何故神はその終着(ゴール)を設けたのか
それは終着(ゴール)に向かおうとすること自体が最も素晴らしいからである
つまりそれは 時に"反抗する"という行為こそが
人間が生きようとする何よりの動力源だからである事に他ならない
だから終着(ゴール)に達するとどうなるのかという問いは神もまったく考えてもいなかった事だった

壮絶な戦いの末に
異端者はついに神をぶち殺した
神の死・・それはつまり神が依存したものが全て消える事を意味していた
神が依存したもの、まずは神が生物に差し向けた
攻撃である"時"が消えた これでもう生物が死ぬことは完全に無くなった が
しかし肝心の死ぬことが出来た生物はもはや二人しかいなかった
その二人も時が停止した今ではもう死ぬ事が出来ない
それは地獄の連鎖の始まりだったのかもしれない
神の死、そして時の停止、それに伴う死の消滅
それに至るまでの経緯で生も、とうの昔に消え失せた
しかしレイナ達はそんな事は、わかりきっていたのだ
全ての元である神を殺せばその後ろに枝を生やすものも
全て断ち切ってしまうという事などは

もし今、この状況で人間達が存在したら
それこそ完全な平和になるのであろう
死が無いから殺人も無く
時に抗う必要も無い
裏を返せば生きる必要が無くなったとも言える

そう、人間とは死がなければ生きられないという
中途半端に踊り続けることしか出来ない何とも不器用な生き物なのだ・・・


fin...

だが、もう全て遅い

 

後書という名のネタバレ

まずは、ここまで読んで下さって有難うございます

小説に限った事では無いですが伏線というものは前の方に張っておいてその意味が後の方でわかると

ああなるほど面白い、というものが多いのですが

自分の小説の場合、意図して張っている伏線よりも

文章力が足りなくて意味がわからない、自分自身でもわかってない伏線が

いつの間にか張られてしまっていて困ったものです(伏線って言うのかそれ

タイトルの紅傷はアカキズではなくクショウと読みます、もとい強引に読ませます(何

この話に登場する主な人物ですが・・あまりにも謎過ぎますのでちょっと解説をします。

まずは主人公の”異端者”。

この世の全生物を滅した上に神さえも殺してしまった理不尽すぎる強さを持っています

しかしどのように殺したのかはまったく触れていません、それは次の”俺”の存在に深く関係しています

”異端者”が全生物を殺した後に殺されるとされていた”俺”。兼解説役でもあります。

(この小説の出来事の視点は全て”俺”が見た事や思った事を中心に展開しています)

これは実は生物ではありません、その物質に意志が備わった存在といいましょうか

思考は出来るけれど、それを誰かに伝えたりすることは出来ないという存在です

その物質とは人を殺すときに使われる物、そう剣や銃のような武器です。

つまり”俺”とは”異端者”が扱う武器の意思というわけです。

だから二人という単位のカウントは”異端者と俺”ではなく

”異端者と※後半に唐突に出てきた生物(※以下、生物)”という事です。

という事で”俺”はかなり前半から”二人”と自分を除いてカウントしていた事から

”生物”と以前に何らかの接触があったという事を意味しています

そして”異端者”が全生物を殺した後に”俺”は殺されると書いたのは

全生物が死ぬ→武器で殺す生物がいなくなる→武器の存在意義がなくなる→捨てられる=(生きる意味が無くなる)殺される

という事を言いたかったのです。

以上、言い訳臭〜い、ばらしてもいいかな?っていうネタばらし解説でした。

後半に出てきた生物に関しては謎、というより何も考えてません(爆破

”異端者”の武器である”俺”も具体的にはどのような形状の物かも謎です(これはある程度、考えがまとまってきてますが)

もしこの小説の続編を書くとしたらこれらのような謎の部分を形にしていきたいと思っています

・・しっかし裏を返すとこの小説未完成じゃないのかという罠が(爆破

そこはこの小説が私の初の小説という事ですので勘弁してください(逃

以上、後書でもネタバレでもなく、ただの言い訳でした。(しかも長い

2004/4/30 孤空

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